MIKURA Vinegary

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2023年1月14日

木桶も生きている

2021年開店時、大桶をお店の前で造ってもらいました。真竹で編んだ箍(たが)を最後に締めて組み上げるところ。
この写真は2021年7月20日開店時

店舗の正面で大桶がお客様を出迎えます
徳島県司製樽の棟梁、湯浅さん

日本には木桶を造る職人さんが全国にいらっしゃいます。少し小さな寿司桶やお風呂用の桶、酒樽、ウィスキー樽を造る職人さんもいます。大桶を造る職人さんは今ではずいぶん少ないようです。当社がお願いした湯浅棟梁は「自分達に仕事を頼んでくれるお客様も減ってきているから」と言いました。そうですよね。需要と供給のバランスだから、職人さんの生活を保障するだけの売上と客がなければ成り立たない。


MIKURA Vinegaryは結い物で繋ぐ会という職人集団に木桶の依頼をしました

MIKURA Vinegaryでは、中古の桶が5台と新品の桶が3台。御浜町と多気町に計8台の製造桶を持っています。
新桶を造ってもらったのは2021年3~5月のことでした。


そのときの動画がこちらです。ご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=_wPD6meSpNk

2021年の7月のオープンに合わせて木桶を納入頂きました。


一台の木桶を五人の男性で運び入れてもらいました
この新桶は四国地方、高知県や徳島県の材木を切って造って頂きました。国産杉のすごくいい香りがします。

中古桶を転用する場合、お酢用の桶はお酒もしくはお酢を造っていた桶でないと再利用できません。
お醤油やお味噌はしっかり木桶に香りが染み込んでいます。塩分もお酢にとっては不要です。
最近棟梁に教えてもらったことがありますが、お酢は、酢酸醗酵(お酒からお酢に変える醗酵工程)時、発熱する。その温度が酢酸醗酵熱は、酒を造るよりはるかに高い温度(36〜38度程度を目標としています)まで上昇するため、木桶の木が熱で反ってしまうようです。まさに木も生きています。

1号桶仕込み情報の黒板
1号桶の温度計。酢酸醗酵の工程終盤。品温が酸度の高さの目安になります。
2号桶の仕込み情報の黒板
2号桶の温度計。仕込みの時期が違うので、工程の段階、温度も違います。
3号桶仕込み情報の黒板。撮影日時は工程の20日目の頃。ちょうど仕込みの中盤。活発に酢酸醗酵中で酢酸菌の活動も元気です。
酢酸醗酵中は、醗酵室の中も暖かいです。

木桶の中は、液体の表面の酢酸膜が空気を取り込んでアルコールを酢に変えます。アルコールより酢の方が比重が重いので、木桶の底、酒の下へ下へ酢が沈みます。木桶の中では自然対流が生まれています。櫂入れはしません。
多気の醗酵室は狭く、また機密性も高いので、現在、1000リットルの木桶をアルコールから酢酸(菌群)に変えるのにだいたい40日くらいです。その後約半年貯蔵熟成します。


ガラス面には酢酸醗酵の説明
醗酵室内側から撮影したガラス窓。湿度も高いです。
1月初旬の醗酵室の中は10度。酢酸醗酵中で少し湿度高い(実は酢酸で湿度計は壊れているっぽい)
醗酵室の中と外気の差で水滴
ガラス窓の水滴を拭いて醗酵室から外を見ます
足元の湿度は60%のようです

醗酵室の中には大きな木桶が3台と、小さな可愛らしい木桶が11個あります。これは湯浅棟梁が造ってくれたものですが、どうしても木桶が熱で反って隙間が空いてしまう。塩分もないので、木を接着させるものもないので、お酢の漏れを木桶で受けています。

木桶は造る人も難しい、メンテナンスも難しい。

仕込みの合間に木桶を洗います
中央はカクタ酢から譲ってもらった(組み直した)昭和初期から使っている木桶

醗酵室の中には入っては頂けませんが、ぜひお店に木桶と酢酸醗酵の様子を見にいらしてください。